訳あり物件。 その言葉を聞いて、一番に思い浮かぶのは……やはりあれですよね。 題名を見てから、不穏な雰囲気を漂わせえる作品です。 ですが、この作品。 あらすじにはこうありました。 上京して直ぐ、駅近の角部屋を、異常に安い値段で契約した主人公。当然事情を尋ねる。すると、不動産屋はこう言った。 「ここでは人が死んだことは一度も有りません」 と。 ん? つまり、訳あり物件だけど人は死んでいない? では、他に問題があるのかと思いきや。 立地やご近所的にも特に問題はなし。でも、値段は安い。 どういうことなのかと思って、読み進めていくと。 なるほど、という結末でした。 この作品はSSコン「嘘」に応募している作品でもあります。 SSコン「嘘」は文字通り、嘘がテーマの物語。 でも、この『訳あり物件』という作品。 誰も嘘を言っている人はいないという。 それでいて、SSコン「嘘」に相応しい(ちょっとブラックな)ユーモアのある、おすすめできる短編でした。