レビュアー

まるで詩をよんでいるような恋物語

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この作品は約九千文字とうボリュームを誇る短編です。 それだけを見ると短編といえども九千文字は・・・・・・と、もしかしたら読者様の中には忌避感を抱いてしまう方もいらっしゃるかもしれません。 実際わたしがそうでした。おっと・・・・・・と読むのを躊躇してしまった。 だけど実際読み始めてみると、不思議なことにそのボリュームをまったく感じない。 それは最後のひと文字に至るまで感じることのないものでした。 冒頭の数行から読み手の心をぐっと引き寄せる筆力があるからです。 まずはその数行。それを読んでしまえば後は最後まで引っ張られてしまう。 そんな力がこの作品にはあります。 ひとつひとつの表現が実に美しい。 これは青春時代の恋愛模様を描いた作品ですが、なんといっても描写力が秀逸です。 恋が始まり、ひとつひとつの思い出を重ねるごとに変化を伴う情景や心理描写は、ほんのりと甘く、ときには少しくすぐったさを覚えるものです。 全体的な雰囲気がやわらかく、強引さをまったく感じさせないストーリー構成は実に自然で、見事としか言いようがありません。 ほんの少しの勇気、ちょっとしたタイミング、ふたりだけの時間。 恋におちると相手のちょっとした仕草や行動にドキドキするものですよね。 その心理描写が見事に読み手に伝わってきます。 そしていつの間にかそんなふたりの恋愛模様を、ほんのりと温まった気持ちで読むことができる。 もうひとつ、季節感を演出する描写がとても素晴らしいと思いました。 春の、夏の、風物詩。 まるで詩でも読んでいるような錯覚に陥ることがしばしばあります。 だけどただ甘いだけが恋ではない。 甘く切なく。痛みを伴いつつも、最後には読み手に勇気を与える素晴らしい作品でした。 ぜひ皆さんにもオススメしたいと思います。

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投稿日:2020年10月16日 21:24

最終更新日:2020年10月16日 21:24