レビュアー

現実か、幻か、悲しい女性の過去を解き明かす歴史幻想譚

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 不思議な男、太郎どんに言われるまま、村から真っ直ぐ道を歩いていると、主人公芳乃の前に不思議な朱色の御殿が立ち現れる。現実か、幻か、導かれるままにその中に足を踏み入れると、妖しい者たちが迎えてくれます。  この者達は誰で、ここはどこなのか? そして芳乃自身は、いったい何者なのか?  平安末期か鎌倉時代初期を思わせる描写を重ねながら、幻想的な雰囲気の中で、芳乃の過去が次第に明らかになってきます。鎌倉時代を舞台にした歴史物語を多く書かれている作者の力量が発揮されて、しっかりとした考証に基づいた文章が、素晴らしい効果を上げています。  幻想の中で辿る芳乃の悲しい過去の物語は、やりきれない思いと激情を重ねて、人生の苦しみ、悲しみを噛み締めながら、やがて救いにつながっていくのでしょうか?  泉鏡花につながるような、歴史幻想譚の世界を存分に堪能して下さい。

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投稿日:2022年2月2日 09:16

最終更新日:2022年2月2日 09:16