ネタバレ

祈りの先にあるものは

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 人間誰しも叶えたい願いがある。  その為に努力する者もいれば、戦う者もいる。希望の前に立ちふさがる困難を前に願いを諦める者すらいる。  だが、夢と現実の狭間にあり、どんな願いも叶えられる場所がある。それが祈りの門だ。  祈りの門にいる四人の番人  獅黒  季朽葉  蘇芳  青螺  彼らはなぜ祈りの門の番人となったのか。  この物語では「なぜ」を獅黒と朽季葉が中心となり語られる。    この物語には様々な物語があるが私がオススメしたいのは第三章「祈りの末に生まれた魔王」である。  今までの話とは違うファンタジーが舞台。  この物語ではヴェルデが主人公となる。  野心溢れる彼女は、新しい王 ネロの使用人となった。  これを足がかりに華やかな昇進の道へ〜  と思い描くのだが、()()()()()そう単純ではない。  ネロを昇進の踏み台としか見てない彼女はいつしか、彼を亡くなった弟の横顔にネロを照らし合わせていた。  気づけば、彼に接する態度も「王」と「使用人」ではなく「弟」と「姉」になっていたのだ。  そんな彼女の変化に周囲は気づいていた。  彼女が「より良い方向」へ向くため、敵国キトリニタスへの潜入が命じられる。  潜入先で出会う人々。  内なる敵意をかき消すほどに暖かい人々だった。彼女の境遇は過酷であった。それこそ人の温かみなど触れる事すらできなかっただろう。  キトリニタスの王ハストルも彼女に「愛」を与えた人物の一人である。  ネロ ハストル  二人の男と出会い、彼女が待ち受ける運命は「凄惨」だ。  物悲しい物語の終わりに「この結果にしかならなかったのか!」となんども思った。  けれども、考えて欲しい。  ヴェルデの物語は祈りの門を通じて触れた物語。祈りの門に触れるには、「大きな代償」が必要なのだ。  ヴェルデは祈りの門に祈りを捧げたわけではないが、祈りの門に触れた事で容赦無くこのシステムに組み込まれてしまった。  代償を払わずに幸せになるのは無理な話なのだ。  けれども、ここの作者の巧妙な罠がある。  作者の罠は、 「朱色の喪失のさきにあるもの」  を読み終わった時でないと理解できないだろう。  ヒントをあげるとすれば、祈りの番人 獅黒と季朽葉。  彼らの長く伸びた過去にはヴェルデの過去が含まれている。これを思い出し読み返すとヴェルデたちの幸せ(祈り)が実った世界は必ずあると予感できる。  長くなったが、祈りの門「朱色の喪失」は複雑な人間模様が交錯する物語である。  一つ読み飛ばすと、蜘蛛の糸のように貼られた図が壊れてしまう。  そんな繊細な物語を、丁寧にまとめ上げたのは作者の筆力と熱意だと思う。膨大な知識量と筆力に頭が下がるばかりである。  この物語を作り出してくれてありがとう。  全ての物語の祈りを願っています。

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投稿日:2020年1月3日 17:49

最終更新日:2020年1月3日 17:49