この作品は実話怪談風の文体で語られる短編集です。が、登場するのは鳥山石燕の『画図百鬼夜行全画集』など大昔の妖怪画に登場するような妖怪たち。 その妖怪が現代の風景に非常に自然に馴染んでいるのです。 精緻な描写で描かれる世界に没頭していると、ふと気が付いたら瞬間にすぐそばに迫っている怪異にゾッとさせられます。 これぞホラーの醍醐味ですね。 この作品の良いところは、最後に主題となった妖怪の名前や特徴が丁寧に記されていることでしょう。 そのおかげで読み返してみた時に「この部分が伏線になっていたのか!」と納得できますし、作者の発想力に唸らされます。 妖怪に詳しい方であれば、この話の主題となっている妖怪は何だろうかと想像しながら読んでみてください。 妖怪はあまり知らないなぁという方は一度読んでから画像を検索してみてください。 え? この妖怪がこんなに自然に現代に?? という衝撃にぶちのめされます。 そのまま妖怪関係の画集や書籍を読んで予習するのも楽しいですね。 思わず「こういうのが読みたかったんだ!」と叫んでしまうような、上質なホラー作品。妖怪入門にもオススメです。 毎週土曜日の夜のお供に。 ぜひ一度ご覧ください。