レビュアー

その語り口、『妖』にして『艶』

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重厚な作品だったのでかなり読むのに手間取りました が、やっと追い付けました 時は大正、妖したちが跋扈する帝都 その影で暗躍する妖怪退治屋たちの冒険活劇! ……と、テンプレ通りの予想をしていた私が愚かでした そんな言葉で片付けられるようなライトな代物ではありません 語られる怪異はどれも禍々しく悲しく、しかし儚くも美しい よく勉強なさっているようで、解説も的確で取りこぼしがない なによりその怪異を大正ロマン妖怪退治に落とし込む語り口 目蓋の裏には情景が極彩色で浮かび上がり、登場人物たちの慟哭が皮膚を貫き骨を染み透りこころに届きます まさに変幻自在、千変万化 とにかく言語センスが抜群に良くて、思わず「やられた!」と膝を打ちました ここぞとばかりにぶちこまれる演出にも目を見張るものがあります まるでキャラクターたちの最も輝く瞬間をすべて見通しているかのようです 不思議の国に迷いこんだようなどこか不安な感覚に陥る怪異譚から、血沸き肉躍る大迫力のバトルまで、いっときたりとも目が離せません 話が進むにつれて過去や陰謀が明かされていき、次はこうなるか?の想定がいともたやすく次々と覆されていきます ひとの誰もが持っている『闇』『弱さ』がときとしてなにより鋭い刃となる、作中に出てくる妖刀もまたそんな存在ではないでしょうか? そんな脆く弱いひとびとの中にあって、主人公の浮世離れしたキャラクターがひときわ存在感を放ちます 飄然としていつつ内に秘めたものを感じさせる主人公が、私には狂言回しのようにうつりました 常にちゃんと物語の中心にいる、そんな印象です おどろおどろしい妖しと、より不気味なヒト そこにあるのは鮮やかな悲しさです 決して湿っぽいお話ではありませんが、私のこころに残ったのはたしかに悲しさでした そんな名状しがたい物語を紡ぎ上げる作者さんの筆力、天晴れです 感動の涙を流したい訳じゃないけどこころ揺さぶられたいひとにぴったりの作品だと思いました 個人的には月彦さんと浅葱さんが大好きです! 影を背負った昼行灯の強者に弱いです…… 一族の陰謀、というか群青さんの暗躍がどう転んでいくのか、今後もどきどきしながら期待してます!

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投稿日:2020年11月23日 10:36

最終更新日:2020年11月23日 10:36