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「次へ」を押す手を止められない! スリリングなノンストップ・サスペンス!

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 最初の部分を読んだら、そこからはもう「ページをめくる手」ならぬ「[次へ]を押す手」が止まらなくなるという……たいへんスリリングなホラー・ミステリー作品です。  無駄のないスタイリッシュな文章が、そのスリリングさを大きく増幅していて、つっかえてしまうような箇所が一つもなく、最初から最後までスルスルと読み進めることができました。  それでいて、読者をグイグイと作品の世界へ引き込んでくれる雄弁な表現力にも、特筆すべきものがあると思います。  まず序盤、主人公が我が身に起こった異変に気づき、「何が起こっているのか」と分析・推理していく過程の描写が秀逸で、ワクワクゾクゾクしながら読み進めることができました。  中盤、ループから抜け出すために試行錯誤していく様子は、スリリングであると同時に痛々しくもありました。  抜け出すには「魔女を殺す」という最悪な選択肢をとらなければいけませんし、それをやらなければ黒ずくめの人が自分を殺しにも来る……という。  なんとかして犠牲を出さずに魔女の正体を突き止めることかできたら、魔女と交渉して、「誰も殺さないまま、8月20日を繰り返しているのが最善じゃないのか?」と交渉する手もあったのではないでしょうか?  しかし主人公はやはり、恐怖や痛みによって精神が崩壊していき、とうとう罪のない人たちを手にかけてしまうわけですが、それゆえの、あのバッドエンドなのだろうなと、私は解釈しています。  最後に、魔女の正体について──びっくりでした。あの部分に出ていたあの人かぁ! と。  丁寧に読んでいたつもりで、「魔女その人」が登場した直後に、次々と怪しい人たちが登場してくるため、読者の注意を巧みに逸らすことに成功していると思います。  このミスリード、とても素晴らしかったです。  その反面、「魔女本人」の登場シーンを、あと2~3個、追加していただければ、正体が判明したときの新鮮な驚きも増すような気もしました(本人の登場はなくても、主人公が彼女を想うシーンをさり気なく挿入する……など)。  しかし、作中で彼女の存在をアピールしすぎてしまうと、読者の疑いが彼女に向いてしまいますし、「登場しない」ということ自体が重要な伏線になってもいるので、ここは、とても匙加減が難しいところですね……。  ともあれ、ヒントや伏線がフェアな形で提示され、しかも巧みなミスリードが多分に含まれている点は、ミステリーとして非常に良質だと思います。  本当に、急転と恐怖の加速が一切止まらず、最初から最後まで目が離せないという体験をしたのは、シドニィ・シェルダンを読んでいた頃以来かもしれません!  次のミステリー作品も楽しみにしております。

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投稿日:2020年11月12日 21:24

最終更新日:2020年11月12日 21:38