少女小説のような耽美さと、ライトノベルらしい燃えと萌え

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2,000

〇

100

多方面に展開される物語と、その中で懸命に生きるキャラクター達が光る作品でした。第一章のみの感想ですが、まずは素直に面白かったと言わせてください。 異世界の伯爵領を舞台に、領地の運営、支配者の世代交代と反対派の鎮圧、王家や権力者達とのかけひき、少人数での冒険と課題の解決、そして兵を率いての合戦 (巨大モンスター討伐)と、領主を主人公としたファンタジー作品に求められた要素をこれでもかと、しかし破綻しないバランスで詰め込んでいます。そのバランスを取っているのは、タイトルにもなっている白黒百合姉妹。二人の物語であるという軸があるからでしょう。 姉に嫌悪感を抱き、大人達の顔色をうかがいながら暮らしていた黒百合の妹オリフラム。しかし彼女は白百合の姉アルフラウとの関係を見直し、失踪した父に代わり領地を守る決意を固めます。策略をもって領主に就任した姉を立てるオリフラムと、魔導師による危険な人体改造を乗り越えて強力な魔法を得たアルフラウ。前述の通り様々な状況に直面しようと、タイトルに偽りない二人の姉妹百合があるからこそ一貫性のあるストーリーになっているのではないでしょうか。ストーリーには明確な目的があるわけではありません。領地の内部で起こる、外部からやって来る問題は様々ですし、登場するサブキャラも多い。ともすれば歴史ものや群像劇のようなボリュームで散らかりそうなところを、姉妹の絆や裏で抱えている秘密という点に読者の注目を引きつけることができているおかげで作品がまとまり、読者が主役姉妹を起点としてサブキャラ達や世界へと視点を広げていくことができるような作りになっているような気がします。 主役姉妹の葛藤や成長は見所です。逆に二人に優位な立場で場面が展開されている時に、サブキャラ達が成長することでバランスを取っているのも上手な点だと言えます。臆病で流されるままに生きてきた過去を反動に、姉妹を支える重要ポジションに就くフィアナ。本作のダークファンタジーとしての側面を一手に引き受けながらも、自らの手で幸せをつかみ取るティア。そして従者として淡々と役目をこなすはずが感情を漏らしてしまったために、思わぬ方向へ運命が動いてしまうミリィ。どのキャラも非常に人間くさいリアリティと美少女キャラとしての魅力を持っており、第二第三の主役として物語を彩ります。フィアナかわいい。 と、女性キャラばかりを紹介いたしましたが、作品概要にもあるように本作は男性のサブキャラも多く登場いたします。ご心配の方も多いかも知れませんが、登場する男性キャラクターは百合の邪魔をしませんし、尺が裂かれ過ぎて百合作品としての本質がぼやけることもないのでご安心下さい。(まあ男性キャラのかっこよさにしびれたり、時としておっさんに萌えるシーンもありますが)少女漫画に出てくる男子のように理想化され、野心や欲がなく女性キャラを助けることに専念したり。逆に野心や欲が丸出しで失敗が目に見えていたり。自身の利益獲得に専念していて人間関係には不干渉だったりと、安心して見れます。そもそも男性の登場自体が嫌という方にはおすすめできませんが、サブキャラとして登場ならば良しという百合ファンの皆様にはおすすめできる作品です。そして男性達がいるからこそ、人々が武器で戦い魔物が跋扈する。ともすれば乱世になりかねない封建社会ファンタジーとしての側面が強く打ち出されています。特にタイトルにもなっている「悪い魔導師」達は作品に不穏な空気を漂わせており、しかしこの不穏さこそ先の展開がどうなるかワクワクさせるスパイスとして機能しているのが作品の魅力です。 キャラクターの話題に終始してしまいましたが、最後に世界観や設定の作り込みにもこだわりが感じられる点を挙げたいです。北国ゆえにアザラシやトドに騎乗する点はオリジナリティを感じますし、登場キャラの戦闘方法は、すぐに退場してしまう脇役であれ作り込みが細かいものもありとても楽しめます。様々な要素が入り交じり一本のレビューとしてまとめることが少々難しかった作品ですが、その分本編を読んでいる間に楽しめる要素が目白押しということで、強くオススメです!

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投稿日:2021年2月23日 01:56

最終更新日:2021年2月23日 02:32