薄暮が迫るロムルス王国で、私はとある教会にフラフラと足を踏み入れたのです。
もはや我慢の限界なのです。
「では、懺悔なさい」
「ご繁忙の折、恐縮です神父さま」
「うん。手短かにな。腹も減ったし」
「御意。他でもない、ウルリカ様の事で……」
「噂は聞いとる。恐ろしい魔界の王だそうな」
「ええ。千歳越え、吸血鬼の真祖です。しかしながら見た目は少女で、黒髪ロングの……」
「少女?」
「めっさ可愛らしい美少女なのれぃす!」
「む。噛むほどか」
「聡明で元気一杯な魔王ちゃまでぃす!」
「何ゆえ人間界に……」
「学校に通うためです。この国にやって来て早々国王様とお友達になったのを皮切りに、その崇高な人間性から次々とお友達をおつくりに……」
「ふむ。その魅力パネぇと」
「お友達のピンチには何を置いても駆け付け、魔物相手でも千切っては投げ千切っては投げ」
「無双ではないか。おまけに情に篤いと」
「はい、無敵であります!またこれが、めちゃめちゃカッコイイのです!中村主水も霞むというもので」
「で、迷える子羊はメロメロであると」
「私がメロメロ?バカな!私が?バカな!メロメロでっす!どうしたらいいですか神父さま!」
「さぁーどーしようー♪」
「その天真爛漫さで魔界の皆さんはもとより、人間界でも沢山の人々に愛され、誰が相手でもけちょんけちょんの無敵ぶり、そしてとにかくーー」
「とにかくナンだ?」
「…………キュートなんです……どうしようもなく……」
「ふむ。左様か……。では、懺悔なさい」
「…………」
私は教会の外に出て、再び中へ足を踏み入れます。
「では、また始めからよろしこ。手短に」
神父さまに促され、ウルリカ様への熱い想いを吐露したのでございます。