レビュアー

時代小説でありながら、ライトノベル!

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時は慶応。 徳川慶喜の命を受け、北辰一刀流の達人山岡鉄太郎は江戸から駿府への旅に出る。 鉄太郎の前に立ちはだかるのは、西郷吉之助が刺客として放った八瀬童子五人衆。 剣術、忍術、妖術を駆使して迫りくる刺客に対し鉄太郎は、時には仲間の力を借り、また時には己の剣一本を頼みに道を切り開いてゆく。 本作「朝敵、まかり通る」は、時代小説というジャンルにライトノベルらしさを絶妙にミックスした娯楽小説です。 まず特筆すべきポイントは文章の疾走感です。 テンポよく繰り広げられる物語は時代小説に興味のない人でも(実は私のことです)ぐいぐいと引き込んで先を読ませようとしてきます。個人の信念や怨恨、政治的な確執、謎の秘宝などなど、様々なスケールの物語が入れ代わり立ち代わり次々と押し寄せてきて、読んでいて全く飽きません。 もちろん時代小説に興味のある人でしたら、そこに登場する数多くの実在した人物たちが織り成す人間模様が、さらに深く物語世界へ没頭させてくれること間違いなしでしょう。 例えが適切かどうかわかりませんが、日本の歴史上の偉人達人でマーベルコミックを描いたような、絢爛豪華な娯楽作品だと私は感じました。 それから推しポイントとして忘れてならないのは、この作品の肝でもある戦闘描写です。疾走感を一切失っていないまま重厚感にも満ち溢れ、スピードにパワーを上乗せして殴りつけてくる作者伊賀谷さんの表現力はさすがの一言に尽きます。 主人公山岡鉄太郎の剣の冴えもさることながら、剣術、忍術、妖術を駆使して迫りくる八瀬童子五人衆との多彩かつ驚きに満ちた戦いは、どれか一つを紹介しても「ネタバレするな!」と怒られてしまいそうな面白さです。詳細はぜひその目で読んで確かめて、驚いてほしいと思います。 もちろん戦いだけではありません。謎のヒロインお満や盲目の美女お市との男女のやり取りが物語のスパイスとして大きく作用していて、鉄太郎という人間を情にあふれる好漢として見事に描き出しています。もっとも、鉄太郎は妻帯者なのですが……。 過去に実在した人物が多数登場するため歴史ジャンルに苦手意識がある方に気軽にお勧めするのはちょっと憚られますが、それでもみんなに読んでみてほしい、ジャンルを超えて楽しめるエンターテイメント作品だと思います。 面白いですよ!

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投稿日:2021年2月23日 17:40

最終更新日:2021年2月23日 17:40