今の私にとっては「そんなこと?」でも、あのときの私達にとっては…………

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 本作は特撮ヒーローに憧れた二人の少女の救済劇である。  一方はヒーロに憧れながらも心の中に憧れを押し殺し、一方はヒーローを体現したように振る舞っている。  そんな二人が人々の日常の中で押し殺している胸の痛みに手を差し伸べていく物語である。  そして前述したとおり、日常の中にある些細な出来事であるため、決して壮大ではない。  読者の中では「そんなことで?」という印象を抱くこともあるだろう。  かく言う私もその一人だった。  彼らの周りで発生する出来事の小ささに笑いもした。  だけど、時間を置いたときにふと心の中に過るものがある。  もしかしたらあの頃の私だったら、こうだったかもしれない。  本作はそうした心がガラス細工のように繊細だったころの自分達を想起させる。  物語には日常の中で慣れていくと同時に失われていくものを蘇らせる力がある。  例えばそれは見慣れた景色に、初めてみたときの美しさを思いおこさせたり、  今では当たり前のように話すようになった恋人と、初めて言葉を交わしたときの緊張感だったり……  本作にはそうした自分達がどこかに置いてきてしまった繊細さを思い起こさせる力がある。  その力があるということは物語としての役割を果たしている。  つまり、物語に好き・嫌いがあったとしても一読の価値があろう作品であることを指しているのである。

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投稿日:2020年8月1日 20:10

最終更新日:2020年8月1日 20:10