「生きる」とは何か、それを考えさせてくれる作品

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 読み始めた時、なんて穏やかな文章なんだろうかと思いました。  一つ一つの言葉が、淡々と紡がれていく。  普段こういった作品は敬遠しがちなのですが、読み進めていく内に、パトリシア・A・マキリップの「妖女サイベルの呼び声」を思い出しました。  あの小説を読んだ時の感覚に似ていました。  穏やかな言葉の中にある、作者の熱い思い。  優しい文体とは裏腹に繰り広げられる、過酷な現実。  生きる為に戦い、生きる為に狩り、糧をその手につかむ。敗れれば自分が相手の糧となってしまう。  その残酷なまでの現実を、作者は静かな語り部として伝えてくれているような気がします。  残酷な運命を背負って戦うヒロインの瑠火は、世間知らずで人との関りが苦手なところもありますが、それも含めて魅力的に描かれています。  そして相棒の幻獣ルシエル。  解き放たれた時の破壊力はすさまじく、目の前にあるすべての物を駆逐していく獰猛な獣ですが、平時は駄々をこねる子供のようであり、また、瑠火を憎々しいほどに愛でる父親のような存在でもあり、物語の中で大きな存在となっています。  流行りのファンタジー物の要素も取り入れていますが、ある意味古典的な正統派ファンタジー作品と呼べるものだと思います。

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投稿日:2020年4月21日 20:01

最終更新日:2020年4月21日 20:01