その味に希望が溶けているのなら

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 正樹が一人暮らしをしているアパートに、交際半年で彼女に振られた拓海が訪ねてくる。  というか、逃げ込んでくる。  彼らは高校時代に出逢い、大学生から社会人となった今も付き合いが続いている。それだけなら仲の良い友人だし、美しい友情を描いたものであるように映る。  友人のことを愛嬌があって明るく、性格もいいと評する正樹。けれど振られ続ける理由を、彼は冷静に分析してから次のように考える。 【意味不明な歴代彼女たちの心理なんて、俺もわからないから慰める言葉も浮かばない。】  第三者として当然のように思える彼の思考が、読み終えた後に見返せば「友人」としては冷ややかな態度だと、遅れて気づく。  けれど手遅れということはない。  なぜなら2人は仲の良い友人だから、傷心の拓海が希望する甘いシチューを作ってやろうと、優しい正樹は考える。手を動かしながら言葉を交わし、ときに笑いながら彼らの夕食が形になっていく様子は、こちらまで微笑ましい気持ちになる。  ただ煮込まれた具材が溶けて1つになるシチューは、ある理由から残念な見た目となって、題名にある「魔女の鍋」になってしまう。  酷い見た目をしたシチューの味。それは食べてみないと分からない。  正樹と拓海の関係もまた、外側からでは分からない。  だって2人は高校時代に出逢った、とても仲の良い友人なのだから。  私信:おいしいベーコンレタスを堪能しました!

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投稿日:2020年11月21日 17:19

最終更新日:2020年11月21日 17:56