喧嘩ばかりを繰り返す両親のせいで、今江紗良は家に居場所がなかった。現実逃避のために心情をSNSに吐き出していたある日、紗良にダイレクトメッセージを送ってきた人物がいた。「おじさん」を自称するその人物は、紗良の話を親身になって聞いてくれた。紗良は「おじさん」に徐々に依存していく。夏休み直前、ついに我慢の限界に達した紗良は「おじさん」に家出したいと漏らす。「おじさん」は、それならうちに来ないかと持ち掛ける。もはや親よりも頼れる存在になっていた「おじさん」の提案に紗良は一も二もなく乗る。待ち合わせの日、紗良を迎えに現れたのは、20代の若い女性だった。彼女、カズナこそが「おじさん」の正体だった。驚く紗良だが、「おじさん」=カズナが紗良のことをなによりも念頭に置いていることは事実であった。予定通りふたりは逃避行する。自分を知っている人間がだれもいない遠い土地で、紗良はつかの間の安らぎを得る。紗良はカズナの歪んだ欲望を掴み、半ば脅し、半ば懇願するように、彼女と肉体関係を結ぶ。それからの日々は幸福以外のなにものでもなかった。だが、紗良の失踪は全国ニュースとなっており、近隣住民に「紗良と似た子がいる」という証言から警察が動き、ふたりの安らかな日々は終止符を打たれる。カズナは実刑判決を受けて服役する。出所の日、今度は紗良がカズナを迎えに来た。ふたりはバイクにまたがり、自由を謳歌するように「セックスしよう!」と宣言しながらどこまでも走るのだった
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