東京の地下連絡トンネルから突如現れた未確認人型変形鉄道車両『ラッド』と戦う鉄道会社『武蔵野鉄道』。 戦争家業に染まったその企業で「電車の運転士になる」という一途な夢を持つ青年『白上 一士』は腐れ縁である事件を境に深い溝を残す同期『松田 晶』や『小湊 信吾』と共に戦場を闊歩していた。 戦いに明け暮れていたある日、彼の率いる第三戦隊に新人『小鳥遊 美優』が配属される。 彼女の類稀な射撃センスに感心する一士だったが、自惚れから初陣で間一髪の危機に追い込まれてしまう。 優しさから出た「降りるなら止めはしない」という言葉。夢のために戦うと決意していたが恐怖を味わい動揺していた美優には重く突き刺さるような切り捨てのセリフだった。 不器用な一士と分からず屋な美優。そんな二人を見かねた信吾の計らいで一士の戦う理由に触れ、気遣いに気付かされた彼女は再び彼の元で戦う覚悟を決める。 そしてラッドとの戦闘は苛烈の一途を辿る。戦友の死と一士に晶の追憶、影から彼を望む異界の使者、ラッドの正体、開戦の発端。 奪われたものを取り戻す。ラッドを圧倒し、亡き戦友たちの屈辱や無念、魂を背負い、戦争を終結させようと藻掻く一人の運転士は、トレインフレームのマスコンハンドルを握り死地を駆け抜ける――。 果てに得るのは夢か仇か、あるいは虚しい平和か。
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