ある日突然、鼻をつまむと他人の情報が書かれた文字盤《ステータス》が見えるようになったアーバント侯爵の長女セシル。 彼女はひょんなことから自分の婚約者である第二王子ルビリオンの想い人が、実兄シュバルツであると知ってしまう。 婚約者の想い人である兄シュバルツの胸の内が気になったセシルは、出来心で兄の文字盤を覗いてしまうが―― 《想い人(?):ルビリオン・アイセ・サイデイリカ 》 書かれていた事実に、さらなる衝撃が走った。 奇妙な文字盤に翻弄されながらも、二人と親しい間柄だからこそ、セシルは見て見ぬふりができないでいた。 どうすればいいのか悩み果てていたとき、彼女の前に現れたのは、長らく祖国を離れ親善大使として諸外国を渡り歩いていた第一王子ハイスヴァルムだった。 「ルビリオンが長年抱えていた気持ちを、君は知ったようだね、セシル嬢」 ――すべてを見透かしたような瞳で、ハイスヴァルムは衝撃の一言を口にする。 どこか懐かしさを感じるハイスヴァルムを不思議に思いながらも、セシルは彼からある言葉を教えられた。 『薔薇道』 それが男性同士の恋慕や関係性を表すときに用いられる言葉なのだと知ったセシルは、まだ自分の知らぬ世界があるのだと痛感する。 そうして、セシルは思い立った。 まずは薔薇道の理解を深めるところからはじめようと。 決意を新たに動き出したセシルだったが、それも束の間ハイスヴァルムからある頼み事を持ちかけられる。 その頼みとは、自分の帰国祝いの舞踏会に合わせて訪問予定だという同盟国の王女に付く歓待役だった。 同時にやってくる帝国の皇太子には、婚約者であるルビリオンが傍につくことになっていると聞き、セシルはハイスヴァルムの頼みを引き受けた。 加えて護衛役は兄シュバルツが務めることとなり、これをきっかけにセシルの運命は大きく変わっていくこととなる。 ※一部の登場人物に同性愛要素が含まれています。ご理解の上、お読みいただけると幸いです。
読了目安時間:1時間33分
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