都雪生(みやこ ゆきな)の父が抱えた借金を肩代わり―― そんな救世主・広宮美土里(ひろみや みどり)が出した条件は、雪生との婚約だった。 お香の老舗の一人息子、美土里はどうやら両親にせっつかれ、偽りの婚約者として雪生に目をつけたらしい。 弟の氷雨(ひさめ)を守るため、条件を受け入れ、美土里が出すマッサージ店『プロタゴニスタ』で働くことになった雪生。 働いて約一年。 雪生には、人には言えぬ淫靡な夢を見ることがあった。それは、美土里と交わる夢。 意識をすることはあれど仕事をこなし、スタッフたちと接する内に、マッサージに興味も出てきたある日―― 施術を教えてもらうという名目で、美土里と一夜を共にしてしまう。 好きなのか嫌いなのか、はっきりわからないまま、雪生は偽りの立場に苦しむ。 そんなとき、美土里から偽りなき本心、淫らな夢の秘密を聞かされる。 ようやく自分の心に素直になった雪生は、美土里と無事結ばれた。 しかし、店のライバルである野々宮貴江(ののみや たかえ)と美土里の元婚約者・木場紅子(きば べにこ)に揺さぶりをかけられ、不安ばかりが雪生を襲う。 挙げ句の果てには貴江の父・野々宮専務に目をつけられ、車で後をつけられたりする始末。 だがそれも、雪生と美土里の仲を深めるだけの出来事になる。 美土里の恋人という自信を取り戻したのも束の間、今度は『プロタゴニスタ』の大切なデータを、スタッフの一人・原が消し去ってしまうという事件が起こった。 それは全て、今まで他の従業員などを買収し、邪魔をしてきた貴江の父・野々宮専務の指示だという。 激怒した美土里は野々宮専務を叩くため、美土里の父・宗一(そういち)と専務たちとの会食の中、専務が野々宮グループの金を私的流用した事実を突きつけ、彼を撃退することに成功。 雪生は宗一に『偽の婚約者』を演じていたことを謝罪する。雪生のことも調べていた宗一は雪生の謝罪を受け入れ、二人の婚約を祝福した。 そして互いの顔合わせも無事に済ませた雪生と美土里は、皆からの祝福を受けて挙式する。 強く結ばれた二人は、幸せな未来に向かって歩き出すのであった。 ・エブリスタでも公開中
読了目安時間:3時間10分
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