前半のあらすじ──── 時は1643年、秋のフランス。 片田舎に住む石工屋の一人息子アルフレッドは、暇さえあれば足しげく森へ通っていた。 彼の恩人であり、満月のような琥珀色の瞳をした女性────村唯一の薬師、イリスに会うためだ。 「あら、いらっしゃいませ。今日も来てくれたのですね」 「来ちゃいました。あとイリスさん、これ教会からです」 「ありがとう、いつも感謝しています」 今とは違って、色々なものがまともにない時代。 そして魔術や瘴気が、まだまだみんなに信じられていた時代。 そんな中ひょんな事から2人は、領主の屋敷に住まわせるための「黒猫」を捕まえる事になる。 ~読まなくても大丈夫! ちょっとだけ時代解説の巻~ 17世紀フランスといえば激動の時代です。 アレクサンドル・デュマの「三銃士」が、大体時代的には近いものとなります。 シャルル・ペローが「赤ずきん」「シンデレラ」「眠れる森の美女」等をまとめたのもほぼこの頃です。 特に作品の舞台、1643年はかなり国が騒がしくなった年でもあります。 5月に国王であるルイ13世が崩御し、後の太陽王でもあるルイ14世が4歳で国王になった年だからです。 そしてヨーロッパ全土を巻き込んだ「三十年戦争」の真っ只中。 まだ科学的知識が乏しい中での、感染症の流行も無視できません。 みんな字が読めるわけでも、職業や結婚、宗教の自由があったわけでもありません。 身分による貧富の差は根強くありましたし、娯楽はほとんどありません。 平穏に暮らせども、明日が保証されていた人など、一人もいないのではないでしょうか。 余談ですが、作中に登場する猫はサバトラ、ブルー、黒猫だけです。 当時まだブチトラ、ヒョウ柄模様の猫はヨーロッパには存在しなかったのです。 錆び猫、三毛猫もいなかったか、かなり少なかったでしょう。 また、フランスでは日本と違い、黒猫は幸運を運ぶ魔力を持つとされ、可愛がられています。 まぁ、そんな事知らなくてもわりと楽しめる歴史推理小説です! ぜひお楽しみください! 「真相が分かった!」「きっとこういうトリックだ」「ヒントほしい」と言う感想も、お話の途中でいいので送ってくれると、励みになります。
読了目安時間:1時間0分
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