物語は3人の視点から描き出される― 一人目は、「アンちゃん」と皆から呼ばれている、残念ハーフであるところの妄想少女。都立の工業高校に通う一年生。 今日も今日とて、「鋼鉄兵機」という名のロボットで、巨大な怪物たちを撃ち倒す空想科学じみた「夢」を見ては、寝坊して遅刻しそうになる毎日。 学校に行けば、教育実習のイケメンに親友とふたり心ときめかせたり、気を引こうといろいろ画策したり。 そんな平凡ながら平穏な日常を送っていた彼女は、ある時、自分の見ている「夢」が連続性を持って展開していることに気づく。ときに俯瞰するように、ときに同化するように、「夢」は少女の中で徐々に存在を大きくしていくのであった。 二人目は、少女の「夢」の中で人型の鋼鉄兵機を操り、戦う女性―アルゼ。その超人的な操縦技術によって敵を屠るその姿に、少女はいつしかのめり込んでいく。女性と、その彼女が属するところの「自警組織」の面々……蜘蛛のような異形を持つ機体を超絶なGを物ともせずに操るクール女史エディロア、大出力のパワーと質量で敵を圧倒するマッシブ機体をぶん回す油に塗れたおっさんオセル……たちに意識を次々と「憑依」させるように移ろいながら、少女は現実と見まごうようなリアルな「夢」の中で、奮闘する。 三人目は、少女の「夢」なのか、少女の「夢」の中の女性の「夢」なのか、それとも現実なのか、定かではない世界で、直近の記憶を失い地底をさまよう謎の人物、「ヤクモ ミノル」。自分の名前と年齢は覚えているものの、自身が宇宙旅行のさなかに何らかのアクシデントに見舞われ、「異世界」に辿り着いてしまったことの経緯が抜け落ちたまま、「洞穴」の中を何とか脱出へ向けて四苦八苦する。 そして。 世界は反転しながら融合していく――