隣人の少年 敷地に現れた見知らぬ少年 青年が目撃したのは自身と同じ世界の底辺、埃溜まりで起きる酷たらしい支配と救いのなさだった。誰もが見て見ぬふりをする、誰もが口だけ出して手を差し出しもしない。 這い出すきっかけを運良く手に入れられただけ。それを理解しているからこそ、少年を救わずにはいられなかった。この世界から少年を放り出すことが先にその世界を生き抜いた、自分自身の責務のように思えてもいた。 期限はほんの数日、残された時間で救わなければ自分がいなくなった後誰が少年が泣いていることに気付けるのか。 誰が搾取と消費に耐えて、少年が生きていることを知るのだろうか。 四日間、たった四日間の軌跡だった。 それは少年を救い出す為だけに与えられた時間―― 男が見つけたのは酷く傷付いた少年だった。 屋根も壁もない、男の敷地のビニールハウスで雨風を凌いでいた少年は挙動が不自然になるほど心を傷だらけにしていた。 思い出せない、出来るはずのことが出来ない、呼吸すらもままならない。 見過ごす選択が出来なかったのは、今自分自身が心を痛めていたからなのかもしれない。けれどこんなにも庇護欲が湧いたのはきっと、大事にされなかった大事なものを、少年に見立てていたこともあった――いつかの自分自身と重なる、大事なものから見えていた世界が、きっとこの通りだったのかもしれない。 自分が大事にしたもののように、この少年を救い、守りたかった。そうすることで自分の中の温みにいつまでも浸れるような気分だった。 少年の人生を知るまでは―― 青年と男、互いに誰かに救われた過去を持ち、それを誰かにも果たす時、二人の大人が一人の少年を救う為に過ごした日々。 そして、行き着いた安寧。 ※BOYSFANコン参加作・お題フリー ※暗い、痛いです。機能不全家族から少々暴力の表現がございます。
読了目安時間:2時間10分
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