あずさは生まれ育った七美町が大好きだった。 学校や家でも、七美町好きを公言していた。 けれど、どうしてそんなに自分の住んでいる町が好きなのかわからない。 理由を考えたがわからないことで悩むことはやめにした。 七美町は迷路のように道が複雑に入り組んでいたが、あずさは迷うことはなかった。町を訪問した人を案内したことは何度となくあった。 そんなあずさだったが、ある日、町の中で迷ってしまった。 もやに包まれ、前が見えなくなり、どこを歩いているのかわからなくなった。 そして、たどり着いたのは洋館の店。 店はポット屋といい、瓶の中に詰めたなにかを売っている店だった。 息をする花や、見たこともない生き物が瓶の中で眠っていた。 ポット屋はあずさが住む世界とは違う異世界にあったのだ。 怖いとは思わず、あずさはポット屋に通うようになった。 そんなある日、店の奥にある秘密の扉に迷い込んだ。そこは地下のように真っ暗であったが、棚にはポットが並んでいた。 覗き込むと、ポットの内側が明るくなり、中で眠っているものの姿がはっきり見えた。 それは妖精だった。 その部屋に眠っているのはたくさんの妖精であったのだ。 その中の一匹がとてもお気に入りになり、「スカーフ」と名づけ、ポット屋に通うのがますます楽しみになった。 その日、いつものようにポット屋におとずれると、店内は割れたポットが散らばっていた。 なにかしら事故が起きて、妖精が逃げ出してしまったのだ。 妖精が見つかるまでもとの世界に帰ることができないと知ったあずさは、知り合った猫のぬいぐるみと一緒に、妖精を探す旅にでることになった。 旅の途中で、さまざまな人と出会い、あずさはこの世界の秘密を知っていきます。 不思議な世界へようこそ!
読了目安時間:2時間53分
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