哉毘(やび)は大きく息を吐き、「まず、これを見てもらうのが分かりやすいか」と、目を瞑る。スーっと息を吸い込むと、半開きにした口から白く発光した煙がたなびく。そして、白く発光した気体が液体へと変質し、勢いよく噴射する。 哉毘は白い液体を掴むと固形化している。 「持って」 楽弥は受け取り、 「これは?」ほんのり温かい。 「これはゲロ」 「え?」 「嘘だよ。真面目か?別に汚いもんじゃない。全部庵慈の受け売りだけど、この白いのはエクトプラズム」 哉毘は白い固形化したものを楽弥から受け取り、遠くへ投げ、「炎(えん)」と発すると呟くと、白いものが巨大な炎となり、熱風が広がり、消失する。 「凄い、こんな事・・麒麟みたい」 「もったいないけど、今のは大サービス」と哉毘白い歯を見せ、「少し難しい話になるけど、体内には物理的ではない孔(あな)がある。その孔がこのパワー、エクトプラズムの源と言っていい。その孔は宇宙だとかあの世だとかとつながっているらしい。庵慈は宙界(ちゅうかい)と呼んでいる。エクトプラズムはそれらの孔(あな)を塞ぐ蓋の役割をしている。孔の位置は人によって違うらしいが、ほとんどは丹田と言われるヘソの下あたり、女性では子宮のあたり」 「モノノケが女性の子宮に入り込むのと・・」 「関係している。で、その孔だけど、人は死ぬ時、その孔から魂が抜けていく。魂というのはその人の記憶を包括したエクトプラズムの集合体なんだ。エクトプラズムの蓋部分が最も高密度で、そこから全身に広がっている。そしてエクトプラズムはうっすらとだけどこの星全体にも充満している」と星空を見上げる。 「僕の身体にもあるんだね」 「そう、誰の身体にもある。だけど、人ぞれぞれその量は違っていて、俺の家系は並外れて多いんだ。だから体外のエクトプラズムも感じやすく、そこらに佇む魂の記憶も感じようと思えば感じる事が出来る。いわゆる幽霊ってやつだ。この能力を遮断できるようになるまではきつかったな」 「確かに霊が見え続けてたら気が狂うかも」 「一族でも女にエクトプラズムの量が多い傾向があったから、魔女の一族と呼ばれてたらしい。でも、エクトプラズムも有限だから量が多いからって使ってたら人と同じになる。簡単に使うっていうけど、使いこなすのには血ヘドを吐くような訓練とセンスが必要」
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