『雅、俺のこと愛してる?』 そう問い掛ける相手は、生死の狭間を彷徨っていた。 ──────── 伊瀬雅は、兄の住むアパートに、半ば居候として暮らしている。 通う高校が近いからという理由で、親を説得して実家から転がり込んできていた。 しかし、本当の理由は別にある──。 夜の十時過ぎ。 風呂上がりの雅がリビングへ向かうと、今日もまた、いつもと同じようにスマートフォンの通知音が鳴った。 そろそろ来る頃だと予想していた。 チャットアプリを立ち上げて、『夜宵』とのトークを開く。 『雅』 『ねぇ、』 『無視しないで』 数分と経たない勢いで、コメントが並んでいる。 一番下の文章は、 『連絡くれないなら死ぬから』 その次に目にしたのは、幾重にも刻まれた手首の傷。 また一つ、増えていた。 静止画像に残されている滲む赤は、鮮やかに零れ落ちそうだった その全てに動じることはなかった。 昨日までは──。 ──────── 夜宵は雅に執心している。 それは、中学生の頃。 二人の間に起きたとある出来事が切っ掛けだった。 手首に刻むようになったのもその頃から。 だから、いつものこと。 その日も、いつものように返事をしていた。 しかし、夜宵の元へ向かって目にしたものは──。 病室で意識が戻らない身体から、魂だけが抜け出して雅の元へとやってきた。 その日から、不可解な出来事と共に、雅へ好意を寄せる者や、新たな関係者が次々と不幸に見舞われる事件や事故が勃発する。 ※軽微なホラー要素があります。 ※各セルフレイティングを設定しております。
読了目安時間:1時間37分
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