その日、姉は赤いボストンバッグと青いキャリーバッグを両手に抱えながら帰ってきた。手にしたバックには姉の怒りが浸透し、めらめらと熱いエネルギーを発していた。 ぼくと父は目と目で確認する必要すらなかった。義理兄と喧嘩をして里帰りしてきたことは一目瞭然だった。 姉は言いたいことを告げると、部屋に戻っていった。 嵐が、我が家の嵐が戻ってきた。 亡くなった母も含め、我が家は姉を中心にまわっていた。 大変な日々が戻ってくる。それをわかっていたが、ぼくも父も、なぜか口元が綻んでいた。 ぼくと父は、待ち望んでいたのだろうか―—。 大事なものを守りたい。輝き続けるものに曇りをいれたくない。そのまま自由であってほしい。 家族の願いの物語。
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