内藤潤也は誰かの目を見て話す事も出来ない、非常に内向的な人間だった。 臆病で、自信もなく、いつもおどおどしていて。 だから気持ち悪がられる事も少なくなかった。 もう中年と呼んでも良い年齢にもかかわらずこんな有様では自信なんて物持てる訳がなく。 学歴は高いのだが、それが能力に繋がらない為むしろ彼にとってはマイナス要因でしかなかった。 周りはどう思っているは別として、少なくとも彼自信は自分が何も出来ないぼんくらだと思い込んでいた。 そんな彼唯一の趣味はゲームであり、そしてプレイするゲームの大半は、所謂乙女ゲーと呼ばれる物だった。 別に女性になりたいという願望を持っている訳でも、男性と恋愛をしたいという性癖もない。 恋愛とか自己投影とかそう言う事ではなく、彼は、輝かんばかりに生きているゲーム内の彼、彼女達が好きだった。 そんな彼が、何の因果かプレイしていたゲームに限りなく似た世界に、理由も目的も良くわからないままに転生してしまった。 ただしゲームの世界そのままと言う訳でもなかった。 少なくとも、転生先の少年を彼はゲーム内で見た事がないのだから完全に同一の物と言う訳ではないと感じていた。 そんなゲームの様な世界で……彼は、前世で出来なかった自分がやるべき事を見つけた。
読了目安時間:27時間13分
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