―― 守るためなら この命さえ―― 誰にだって眠れない夜はある。 それは過去のトラウマをふと思い出してしまったときや 怖いモノを見てしまったとき それからゲームのやりすぎで 目が冴えてしまった時などによく当てはまる。 そして夕樹の場合はというと もっぱらゲームのやりすぎで 目が冴えることの方が多かった。 そういうとき 彼はきまって砂丘へ足を運ぶ。 そこは満天の星を手軽に拝むことができて 誰にも邪魔されることがない。 丘の下の海の音も心地よく耳に入ってくるので 人混みの苦手な夕樹にとっては 数少ない憩いの場になった。 ――けれど。 そうした彼の何気ないルーティーンが 思わぬ展開を引き寄せた。 夜中の1時に親も連れず 二人だけで海辺を歩いている歳の離れた姉妹の姿。 その様子は 遠く離れた夕樹の目からしても 平和なものには映らない。 「さぁ 行って! はやく‼」 姉の切羽詰まった叫びとともに ふいに背丈を伸ばしたのは 何の前触れもなく発生した1つのは高波だった。 「お姉ちゃん いかないでぇ。 アカネをひとりにしないでぇ‼」 朱猫は思わず顔を覆った。 力なく膝から地面にくずおれて 濡れた砂地に顔を埋めているあいだにも 濁った波が勢いよく押し寄せてくる。 夕樹はとっさに駆け出して 小さな少女に腕を伸ばした。 「おい 大丈夫か」 ギリギリのところで なんとか守ることのできたこの命。 だけど これがすべての終わりではない。 奇妙な物語は ここから始まる――。 つづきは本編にてお楽しみください♡
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