居酒屋で若者が二人。怪談話を語る二人の元へ、怪しげな男が語りかける。 男は語り出す。黄泉の船頭と、彼が出会った奇妙な亡者。 亡者は語り出す。とある場所に、とある二人。かつて人であった二人。 一蓮托生。二つの体に昼と夜の姿。 空船(カッちゃん)と雲児(クウ)。生きていたころの記憶を探す二人の半妖。 秘められた過去の鍵を握るのは、麗しき人魚と、野心あるその従者。 彼らの口から語られるのは、過去と現在、二つに分かたれた物語。 一つは、消えた雲児を追う空船の追跡劇。 もう一つは、雲児と空船の正体に迫る巽と柳の回想と、亡霊からの逃亡劇。 物語は箪笥のように、彼らの記憶の引き出しを開けることで綴られます。 その引き出しを開ける狂言回しに、もう一組。 黄泉にて名前を失くした船頭と、船頭の消えた過去を知るという同行者。 同行者は船頭に語り掛けます。 「思い出せ。これは、ぼくと、あなたの物語である」……と。
読了目安時間:3時間43分
この作品を読む