「おかえりなさい、父さん」 退役した中年エヴァンは、突然目の前の青年オーガストにそう声をかけられる。しかし息子はまだ十歳になったばかりのはず。「未来から来ました。これで7回目です」と彼は信じられないことを口にした。 心身ともに傷つき、障害を負った体をやさしくオーガストに介護される日々。時折、自分が死ぬ悪夢にうなされるようになる。彼は、本当のことを言っているのだろうか―――― 現役時代のエヴァンは、上司に体を汚されて、自己嫌悪により風俗に通った。その光景を妻子に見られて問い詰められ、精神的な限界を迎え、自ら離婚を切り出した。 過去のフラッシュバックにより何度も情緒不安定陥るエヴァン。友人のゴードン、ケイシー、優しい近隣住民、そしてもちろん、オーガストにも支えられたが、罪悪感ばかりが蝕んでいった。 ある日、隠されていたオーガストの日記を発見し、衝撃の事実を知る。パニック状態に陥ったエヴァンは、オーガストから謝罪と愛の告白を受け、抱きしめられた。エヴァンは、その真摯な態度に、彼を本当の息子と認め、体の関係まで持ってしまった。 信頼できる家族の存在を手に入れた。しかし、エヴァンの希死願望は潜在的に残っていた。 自分の存在が、息子にとっていいものだろうか、と日々考え続ける。自己防衛のためか、過去と現在、時間の感覚と記憶があいまいになってゆく。腑抜けになりつつある自分を変わらぬ愛で優しく接してくれるオーガスト。 やがてエヴァンは、一つの答えを出した―――― ※小説家になろうにて、R18作品として公開しています。
読了目安時間:1時間50分
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