5年前。 手のひらサイズのフルダイブ型ドローン『アルター・エゴ』が発売された。 このロボットの一番の特徴は、ドローン技術とフルダイブインターフェースとの融合だ。 元々は、人の手の届かない危険地帯などで作業をするためのロボットとして開発されていたのだが、政府は「あまり現実的ではない」という理由からこの技術を民間企業に流出させた。 一つの民間企業はこの技術を利用して『アルター・エゴ』の原型となる機械を発売したが、操作の難易度が高すぎること、一つ一つの機材が高価すぎることなどから、『オタクのおもちゃ』としてコアなファンから支持されていたに過ぎなかった。 しかしいつの世も、時代を動かすのはオタクたちだった。 操作性の悪さはとある一人の天才的な発想により、初心者でも簡単に操作できるように改善された。 何度かの技術革新により、フルダイブ機器やドローン自体のパーツの価格も、少し贅沢をすれば一般家庭にも手を出せる値段にまで落ち着いた。 開発者たちの「あくまで責任問題は避けたい」という発想がにより様々な安全装置が取り付けられることで、暴走のリスクや、暴走時のリスクもほぼ解消された。 嘘か誠か、「フルダイブでロボットを動かす経験が子供の脳の成長に良い影響を与える」という研究も発表され、それがニュースで取り上げられたことも追い風となっている。 完全に何でもありのVRと違い、実際の機体を操る『アルター・エゴ』にはいくつかの制約があった。 あくまで動くのは現実世界のドローンになるため、物理法則を完全に無視したような動きをすることはできない。 いくら機械技術が発展しても、魔法や魔術は使えない。 そしてだからこそ、戦いとなるとプレイヤーの技術の差がそのまま勝敗に直結する。 今や『アルター・エゴ』は世界規模での対戦大会まで開かれていて、その勝敗に、子供から大人までが注目していた。 これはそんな『アルター・エゴ』の黎明期に活躍した一人の選手・・・と、そんな彼をを影で支える一人のプログラマーのお話。
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