魔女狩りって、こんな辺境の地まで及んできたのか。 腰痛に効く温泉があると聞いて、わざわざこの田舎町にやってきた俺は――まぁ、過去のことはいいか――しがない腰痛のおっさんだ。剣は持ってるが、もうしばらく抜いてもいない。馬にも乗れないんだぜ……。なぜか? 腰痛だからさ。 ところが、だ。その温泉に入る前に、俺は「魔女狩り」に遭遇してしまう。まぁ、俺がよっこいしょっと頑張った結果、なんとかなるんだけど、いやぁ、危ない危ない(腰が) だがしかし、おかげさまで俺とその魔女とよばれた女は、真夜中に町から逃げ出す羽目に。ちなみにこの女ことタナさんは、「魔女を引退した」らしい。理由を訊けば「魔法は肩が凝る」からだそうで……。激しい腰痛持ちとしては、とても同情したいところだ。 そんなことが縁で何となく歩いていた俺は、タナさんに「カルヴィン伯爵に会いに行くよ!」とか言われてしまって驚愕とした。だって、カルヴィン伯爵領といえば、直近の「魔女狩り」発祥の地だぜ? 本当に俺たち、カルヴィン伯爵のところにいくのか? 行けるのか? 俺たちは旅も早々に、ハーフエルフ幼女や、ドラゴンの末裔の娘と旅路を共にすることになる。そしてだんだんと見えてくる真の悪の姿。暗躍する魔女たち、ちらつく教会の影、悪魔の哄笑。そんな険しい旅に、俺はついていけるのか。腰がすごく心配だ。とにかく腰だ。腰が不安だ。 ――剣を抜けない剣士(俺)と、魔法を使わない魔女(タナさん)の旅路は果たして……。 (※表紙イラストは「るいさん」) // ----version 2.0 ----