悪夢のような世界だった。目に見えるもの耳に聞こえるもの、時には口にするものすら毒のようだった。 なにをどうしたらこうはならなかったのか。 いつ、どう考えても望むような世界には繋がりもしなかった。 青年は与えられなかったものの数々のかわりに得たものを失った。本当の意味で、自身の手中から。 与えられなかったものを幾ら探しても転がってもいなかった。得られたものは常にたったひとつ、それだけをまた、失った。 必死で生きた。必死で。 世界は生まれから最後まで自分達をまるでまともに生かしてもくれやしなかった。 行き着いた海が全て終わらせてくれるのだと、最後にそう信じていた。 青年は自身の無力の所為で欲しかったものを失った。 いつかきっと手に入るのだと叶うのだと、誰もが見放したものも握り締め続けていた。 しかし、結果を受け止めて遂に知った。どれだけやり尽くしても、けして手に入ることはなかったのだと。 こんなにも尽くしていても、一度たりとも自分に光が当たったこともなかったのだと。 こんなにも、こんなにも覚悟していたのに。 もう、誰も想いやしない。信頼も信用も、血筋も世界も。 閉じ籠もってしまえばもうなににも傷付くこともないと信じていた。 〝なにをどうしたら、こうはならなかったのか〟 絶望からも落ちた二人の青年が出会い、抉れた傷に苦しみ、藻掻きながらも互いを掴んで生きる世界。 二人だけの家。静かな土地、静かな家、昏い森に月明かりと荒れた海。 ここにはそれだけだった。 ※BOYSFANコン参加、お題フリー ※BL/メンズラブ ※▲の回には性表現がございます。 ※とても暗くシリアスです、苦手な方はご注意下さい。 ※けして穏やかな内容ではありません。トラウマものが苦手な方はお気を付け下さい。
読了目安時間:1時間39分
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