馨の結婚
桐生甘太郎
恋愛/ラブコメ
完結済
長編
27話
165,661字
2020年11月27日更新
僕の名前は上田馨(かみた かおる)。いわゆる「良家の長男」だ。父は大きな企業の社長だから、僕は跡取り息子ということになる。 幼い頃から父のプレッシャーに耐え、僕は大学入試で、トップの成績目指して必死に勉強した。でも、新入生代表の挨拶を任されて壇上に上がったのは、僕ではなく、女の子だった。 彼女の名前は、園山美鈴。美しく、頭脳明晰で、そして奥ゆかしい、魅力的な女性だった。 僕は入学してから彼女を追いかけ、肩を並べて勉強をして、恋に落ちた。 迷いに迷って思いを告げた。叶わないだろうと思っていたから。でも、彼女は泣きながら嬉しそうにため息をついて、「私も同じ」と言ってくれたのだ。 その日から僕は眩い日々に踊らされて、彼女に夢中だった。 でも、僕の家族はよく思わないだろうとは知っていたから、彼女と交際をしていることは家族には黙っていた。それなのに、目ざとい執事にそれが知れてしまう。 「公原さんは父さんを信頼していると思いますが、僕が「黙っていてくれ」と言っても、聞いてくれますよね?」 そう聞いた時、執事の公原さんは渋い顔のままで、「もちろんそうしますが、それが最善の道とは言いかねます」と、ぶっきらぼうに言い放った。 美鈴さんが大学院に進み、僕が自分の家の会社に入ってから、僕たちは結婚を誓った。 でも、父からは会社のための見合い話を押し付けられ、母からも猛反対されて、「子供の立場で勝手をしないように」と僕は部屋に閉じ込められてしまった。 携帯電話も財布も取り上げられて、僕は追い詰められていた。でも、方法はいくらでもあった。 だから、戸棚から曾お祖父さんの銀時計を取り出して、実印と大学の卒業名簿も鞄に詰め、部屋の窓を、音もなく開けた。 もう頼れるのはあの人しか居ない! この小説は、「小説家になろう」などの他の投稿サイトにもアップロードしております。
読了目安時間:5時間31分
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