半分世界
藤樹
現代/その他ファンタジー
短編
1話
1,305字
2023年3月23日更新
あなたの瞳に映る景色はどんなもの? 新緑も紅葉も、カメラに収めるより鮮やかに見えるんじゃないかしら。自然の美しさはその時でないと味わえない特別感があるわよね。 でも、その感動を見せてくれる瞳には見えないものもあるの。 例えば話す言葉、相手の気持ちや感情といった内面は窺い知れないものでしょう。 逆にテレビの字幕や小説の活字は見えるけれど、感情が伴わないから受け取り手次第で意味が変わってしまう。 世界は見えるものと見えないもので溢れているけど……もし、この世に斜めの世界があったら。 鮮やかさとはかけ離れたモノクロの世界で、見えないはずの人の心が見えてしまったら。 あなたは知りたいと思うかしら? それとも知りたくないと思う? 私は知らなくてもいいと思うわ。それより見ないフリや見落としている物事に目を配った方が有意義だと思うの。 だけど、少しでも知りたいと思ったなら。思ってしまったのなら、代わりに私が話してあげる。 あなたたちには見えない斜めの世界__斜界 (しゃかい) と呼ばれる場所で起こる、様々な出来事。 さまよう心に寄り添って、彼らの世界が少しでも明るくなるように助ける役目を担う、癒使 (いやし) の話を____
読了目安時間:3分
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