ミゼリコルデを知っていますか? それは慈悲の名を冠する刃。 それは一抹の情け。 せめて苦しまぬようにと与える介錯。 だが、それはあくまで人間のお話。 五大長命種であるドラゴン、エルフ、ドワーフ、フェアリー、ゴッドに関しては事情が違う。彼らは簡単には死ねない。その力ゆえに、その命永きゆえに。 高潔な魂も、清らかな性根も、崇高なる信念も、時の前には脆い土くれに等しい。彼らは歳を重ねて強大になり、そして最終的に災害になる。 それは老害と呼ばれる災害。 彼らは同族が老害になるのを忌み嫌う。だが、自らの手を下すのも厭う。 ゆえに1つの役割が生まれた。 老害狩りである。 老害狩りは災害と化した五大長命種を無に帰すのが仕事である。だが、それには多大なる犠牲を払う。加えて、老害と化したとはいえかつては長命種の一員として名を馳せた者を倒すのであるから、恨みを買うことも必定。 結果として老害狩りは衰退した。 完膚なきまでに。 今や老害を狩る者は居らず、ただ封印を施されるのみ。その封印すらできない老害もいる始末。 いずれ世界は老害に滅ぼされる。 五大長命種はそれを悟っていた。 だが、ここに1人の人間がいる 異世界の記憶を持つ者である。 名を山村(サンソン)という。 彼がこの世界に持ち込んだ力は「介錯」 死を受け入れた者に安らかな終わりを与える力。 これは、彼が長命種のミゼリコルデとなり。そして五大老害を葬送するまでの物語。
読了目安時間:21分
この作品を読む