「ごきげんよう! レヴィーア・フローディアよ!」 鏡の前で令嬢っぽい仕草を研究する私は、トラックにはねられた記憶とかないけど、気がついたらプレイしていた乙女ゲームの世界にいた?! これがもしかして、異世界転生ってやつ? でもでも転生先が推しの婚約者にも関わらず、ゲームでは一言しか触れられない空気キャラだったの! なにこの微妙なポジション…… いや、良い。そこは一回置いておこう。 そんな事より—— 「開幕婚約破棄されたと思ったら、推しが処刑されるってどういうこと!?」 眼前で晒される推しの生首……こんなの見せられたら泣くに決まっている! だってあんまりじゃないか。 推しのいる世界に転生したかと思ったら、記憶が戻ったのは婚約破棄の瞬間で、しかも情報量に気絶して次に目が覚めたら推しが死んでいたなんて! 前世の私はどんな悪事を働いて、こんな仕打ちを受けているんだチクショー!! 推しが死んだらオタクは泣くんだよ! ヴァーカ!! あまりにものショックにうずくまって嘆く私だが、次の瞬間ゲームで何度もリピートした推しの声が聞こえてくる—— 「レヴィーア・フローディア。貴様、そこで何をしている」 「は」 恐る恐る顔を上げる。 「ぎゃっ」 眩しい。 顔を上げたら王城の執務室で、しかも死んだはずの推しの前だった。大窓から差し込む光をバックに、冷ややかな目線で見下ろしてくる執務中の推しがあまりにも眩しい。 なにがどうしてこうなったのか、本当に訳が分からない! 劇的展開に頭の中はもう真っ白。 だから、推しを前にしたオタクはとりあえず条件反射で叫んだ。 「踏んでくださいっリベル様ッ!!」 これは、冷酷無比な悪役の婚約者に転生?したガチ恋系限界オタクが、救われない推しを幸せにするべく何度も破滅ループへ挑むお話。 *月一を目標にのんびり更新していきます。 *表紙は雛鳥様にいただきました
読了目安時間:2時間45分
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