僕、坂月康太には小学生の頃からライバルだった女の子がいる。 左文字姫子、同じサ行だから隣の席になる事が多い女の子だ。 テストの度に点数を競い、そして負けて悔しがる。 負けた時の姫子を見ると、なぜだかちょっとだけ愉悦に浸る自分がいた。 僕はクズなのかもしれない。 小学校、中学校とずっと勝ち続けてきた僕に対し、姫子は言い放った。 「大嫌いなので、近寄らないでもらえますか」 とても丁寧に、とても静かに、とても破壊力を秘めたその言葉。 言葉通り、僕は姫子との距離を取り続けていたのだけど……。 高校に進学すると、中学から同じなのは姫子だけ。 無駄に成績の良かった僕達に、昔の連中は付いてくることが出来なかったんだ。 「中学の時のことは忘れて、また勝負して欲しい」 姫子からのお願い。 「勝負だから、勝った方の言うことを何でも聞くってルールを追加したい」 また同じクラスになって席が隣になってしまったから、無理にでも僕から逃げたいのか。 中学の時はそれに素直に応じた。 でも、裏を返せば僕が勝ち続ける限り姫子は僕から逃げられなくなる。 それに気づいた僕は、彼女との点数勝負を受ける事になった。 彼女の言葉の全てが、裏返しの意味だとは気づかずに。
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