暗くて冷たい冥界。 あらゆる魂が行き着く場所であるそこを統治するのは女神・エルゼリカ。 真面目で厳しい彼女は日々懸命に冥界を治めていた。 そんな彼女を訪れるのは、妹の美の女神だけ。 けれど恐れられている自分とは違い、誰からも愛され美しく華やかで楽しい日々を送る彼女に、エルゼリカは嫉妬の念を抱いていた。 エルゼリカはそんな自分が大嫌いだ。 ある晩、魔法を通じて地上の世界を眺めていると一人の男神を見かける。 彼と目が会った瞬間、思わずエルゼリカは逃げ出してしまう。 翌日、彼に謝罪するためにもう一度魔法で彼を探すエルゼリカ。 彼はすぐに見つかり、エルゼリカは声をかける。 噛んだりどもったりしながら、なんとか彼に謝罪することが出来た。 しかし、その後も彼のことが気になってしまい、毎晩彼の姿を探していく。 その甲斐あって、ついに彼と再会することができた。 そこでの会話の中で、彼は美醜の判断がつかないことを知る。 さらに、今後も話をする約束を取り付けることが出来た。 それからというもの、彼と過ごす僅かな時間がエルゼリカの癒やしとなっていく。 未だに名前すらも知らない二人であったが、ついに男の方が名前を告げた。 彼の名はグレイガル。戦神である。 そしてグレイガルは問いかける。美の女神ではないのか、と。 彼から嫌われるのを恐れたエルゼリカは咄嗟に肯定してしまう。 彼を騙していることに後悔するエルゼリカ。 いつまでも騙し続けられるわけがない。そんなことわかっているのに、本当のことが言えない日々。 ある時、ついに二人は直接会うことになる。
読了目安時間:1時間24分
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