ある日を境に、世界は変わった。 地上の大半が突如として謎の結晶に覆い尽くされ、同時に多くの人々がそれに呑まれて亡くなった。 これが、後に『不可成結晶体(クリスタル)』と呼ばれるようになる物質によって発生した一連の大災害、もしくは破滅。 ――通称『大析出(ブロウ・アウト)』。 この大災害によって、各地の都市は一つの例外を除いて見る影もなく壊滅した。 そうでないところは、やはり一つの例外を除いて不可成結晶体が原因である結晶病が蔓延し人口が激減した。 そして来るある日。 人類にまつわる何もかもが限界に達した。 居住可能な土地と食料を巡る戦争が、一つだった世界なんかお構いなしに、互いに互いを喰らい合う戦争が世界規模で始まったのだ。 ――そんな、世界群発戦争が集結して三十年。 一度砕けた世界は二つの勢力へと大きく二分化され、互いに対立し、そして冷たい戦争の最中にあった。 海上都市国家『エリュシオン』に住む静馬エトは、友人の研究の手伝いのために赴いた大析出の爆心地で一機の人型機動兵器VAFと邂逅し、そして一人の少女と遭遇する。 謎の少女を保護したエト。 しかし、それはエリュシオンをそして、結晶に喰われゆく世界にまつわる紛争と巡礼の始まりでもあった。 結晶の御世に於いて、人は結晶と共にあった。 結晶から産まれし少女と、その少女に救われた青年はやがて共にあることを望んだ。 結晶に喰われながらもそれでもなお、互いに戦い続けるこの世界で、二人は何を継いで、何を願う――?
読了目安時間:5時間5分
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