王妃、レイニーマインは従順な妻だった。公爵令嬢として当時の王太子に嫁ぎ、まだ世継ぎには恵まれていないものの幸せな日々を送っていると思っていた。 しかし。 ある日夫である王クレインが腹違いの妹のリリスと浮気しているのを目撃してしまう。 詰め寄るレイニー。開き直るクレイン。 そして聞かされる、リリスの懐妊。 全てはレイニーに子ができないのが悪いのだと、そう言い放つクレインに。 それでも、王妃としての政務は今後も続けさせてやる、と。 お飾りであっても、王妃の座はお前にくれてやる、と。 そんな虫のいい話にとうとうキレたレイニー。 「いいです。お飾り王妃の座なんかいりません! 離縁、してください!」 「ふん、お前のようなグズを王妃にしてやった恩も忘れてそれか。ああわかった。離縁してやる」 「最後に、わたくしたちの後見人となってくださった帝国皇帝陛下にご挨拶をしたいと思いますが」 「ああ、そうだな、皇帝陛下にもお前と離婚してリリスと婚姻を結ぶ旨を報告しなくてはな。しかしいいな、余計なことは言うなよ。説明は全て私がする。そもそもお前など、私の妻でなければ皇帝陛下の御前にもあがる資格はないのだからな!」 学生時代。 王太子だったクレインの後輩として生徒会に参加したレイニー。 当時、慣れない会計の仕事を一生懸命にこなしていたものの、思わぬミスや間違いをしてしまい落ち込む彼女に。 厳しくも、温かい目を向けてくれたクレイン。 だからか。 こうして婚姻し王妃となったその後も、二人の関係は当時の先輩と後輩のように。 王妃として頑張って国家経営に励むレイニーに。 苦言を言うだけの王、クレイン、という構図がいつの間にかできていた。 それでもいい。 それでもわたくしが頑張れば、国のためにも愛するクレインのためにもなると。 そう思って頑張ってきたのに。
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