『魔物を倒すと強くなれる』そんな事は誰もがみんな知っている。 ただ、普通に生活していれば魔物と戦うことはないし戦おうだなんて思わない。 何故なら兵士や迷宮探索者が魔物を退治してくれるからだ。 今は、昔みたいに種族間での戦争や領土を拡げるための侵略行為、あるいは地位や権力を掌握するための覇権争いといった、物騒なことに躍起になっていた時代ではなく、色んな種族が同じ村や街で共に生活し、違う種族同士でも結婚ができる世の中だ。 それに、国の内外問わず多少のいざこざが勃発したとしても、武力行使などは行わず、話し合いで解決しているので、大きな戦争が起きることもなく、それなりに社会秩序が保たれた平和な時代が永く続いていたりもする。 なので、争いごとのない平和な時代に育った者達は、昔の物騒だった時代の人達と違って、強さを求めていないので戦いとは縁の無い生活を送っている。 だが、そんな戦いとは無縁な生活を送っていた者達でも魔物と戦えば手っ取り早く強くなれる。 ただし、自分よりも強い魔物を倒した場合に限るので常に命懸けの戦いが必要となる。 ~~~~~ ケビンは働いていた武器屋の主人から突然店を畳むと言われ無職になってしまった。 新たな勤め先が見つからず途方に暮れていたケビンだったが「自分で装備品の収集をして店を開けば良いんじゃね?」と思い立ち、魔物が生息していて危険ではあるが、色んな装備品が手に入る「迷宮」に挑み始めた。 戦いとは無縁な生活を送っていたケビンだったが、迷宮を探索し始めて三ヶ月が過ぎる頃にはだいぶ身体能力は上がり『魔物を倒すと強くなれる』ことを改めて実感する。 そして、迷宮の最下層に出現する迷宮主を倒したケビンの目の前に突然ゴリラが現れた。 自分は魔族だと主張するゴリラが「魔族領にある家まで連れてって欲しい」とケビンに頼み「報酬としてうちの武器庫から好きなだけ装備品を持って帰って良い」と提案してきた。 自分の店を持つ夢が叶うと確信したケビンは、快くゴリラの申し出を引き受けてしまうのであった。
読了目安時間:5時間46分
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