一目見て、この人を好きになる、と思った。 もしかするとその瞬間にはもう好きだったのかもしれない。 大した夢も期待もなく、滑り止めの女子校に入学した若葉。入学式の翌日賑わう教室の中で、クラスメイトの菖蒲にこの学校で制服を着ているのは珍しいと諭される。そう、私服可の校内で指定の制服を着ていたのは若葉だけなのだった。 明日からの私服問題が頭でぐるぐる回る中、若葉は廊下を通り過ぎていく一人の先輩に目を奪われる。 少し風変わりな言動、人形のようなとびきり美しい容姿。彼女の名前は麻木桜。桜は若葉に声をかけて、すぐに立ち去った。菖蒲曰く美人で目立つ彼女は校内でちょっとした有名人らしい。 もう関わることのないはずの先輩。息を呑むくらい綺麗な彼女が着ていたのは、若葉と同じ紺色のセーラー服だった。 年齢も性格も全然違うはずなのに、偶然の再会から不思議と親しくなっていく二人。少し浮世離れした麻木先輩と接する中で、次第に若葉の中に芽生えていく気持ちとは。 これはちぐはぐな二人が四季を巡り心が近づく、あるいは一目惚れに纏わる恋物語。
読了目安時間:1時間5分
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