東北のとある山脈の麓に、その町はある。 災害後、分散型都市計画から除外された数少ない町として十年近く前マスコミに取り上げられた程度で、それほど世間に知れ渡っている町ではない。 町は四方を山に囲まれた盆地にあり、典型的な扇状地により、いたるところからこんこんと清水が湧き出ている水郷である。 自然豊かで、四季というものを肌で感じることができる。簡単に言えば、田舎だ。 その町の名は――《水神楽町》 どこにでもある田舎の水神楽町には秘密がある。 町の住人はその秘密を知らない。知っているとしても、ほんの一握りだけだ。 その秘密とは――小説や漫画ではよくあること。 ありがちなことが現実と感じられる人はごくわずか。そのほとんどが被害者だ。しかし、被害者は秘密のほんの一部を見ただけに過ぎない。そして、見たとしても忘れる。記憶から抜け落ちる。 秘密は、些細なことで封印が解かれる。そう、ほんの些細なことで……。 今日も今日とて、町のどこかで封印が解かれ、その秘密は静かに目を醒ます。 ※セリフに方言が混じっていますので、ルビを振っています。濁点を抜くと割と読みやすいと思います。 ※ほかの水神楽町怪異譚との兼ね合いもあるため、更新は割とゆっくりになります。
読了目安時間:1時間29分
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