これは「灰色のページ」が出来上がる数年前のこと。 18歳の千葉司には長年連れ添う幼い頃からの友人がいた。彼は少し変わっていて、見えないものが見え、聞こえるはずのない声が聞こえ、わかるはずのないことを知っていた。 他の誰とも違う不思議な存在であったが、彼がそれを悩んで心を病んでしまうようなことも、弱音を吐くことすらもなかった。 しかし、18歳になったこの年。 友人は初めて自身の変わった部分を千葉に漏らした。 「父親に纏わりつくものが、確かな悪意を持っている」 見えてしまう彼の目には、真っ黒な人型をした靄が父に寄り添い、常に父の顔を覗きこんでいる姿が見えていた。その個体は他の〝見えてしまう〟ものとは明らかに違う、明らかに、意思と理由を持っているのさえもわかった。 それは父に纏わり付いている。だが、それが向ける悪意は父ではなく、友人に向かって放たれているのだと。 友人が初めて漏らした言葉を無下にするわけにはならない。千葉はすぐに「専門家」である、同じく古くからの友人に助けを求めた。 (シリーズの「禍福をくうモノ」をお読み頂けておりますと繋がる部分が御座います) ※「依頼人」に起こる様々な不思議な出来事、グレーゾーンの現象を解決していく怪奇系ミステリー。
読了目安時間:2時間9分
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