愛された執事
石塚環
恋愛/ラブコメ
完結済
短編
5話
10,605字
2021年9月9日更新
西川朔哉(にしかわさくや)は、執事の家に生まれた。西川家には、当主に抱かれるという伝統があった。しかし二十歳の誕生日で迎えた儀式当日に、朔哉は当主の緒方暁宏(おがたあきひろ)に拒まれる。 この館で、普通の執事として一生を過ごす。しかし、幼い頃から男に抱かれるのだと教え込まれていた朔哉は、恋愛経験がなくても、暁宏を恋い慕うようになる。 一年経ったある日。館に暁宏の友人である佐伯秀一郎(さえきしゅういちろう)が訪れた。秀一郎は朔哉に、夜中に部屋に来るよう伝える。 秀一郎は知っていた。 西川家のもうひとつの仕事……夜、館に宿泊する男たちに躯でもてなしていることを。朔哉は亡き父、雪弥の言葉を守り、秀一郎に抱かれることを決意する。 「わたくしの躯には、主の癖が刻み込まれておりません。わたくしをはじめて抱くのは、秀一郎さま、あなたでございます。通じ合うことを教えるように抱いても、ひと夜の相手だと乱暴に抱いても、どちらでも良いのです。わたくしは、男がどれだけ優しいかも荒々しいかも知りません。ですから、秀一郎さま。どうか、秀一郎さまのお好きなように。思うままに、わたくしの躯を扱いください」 夜、秀一郎が待つ部屋に行くと朔哉は告げた。 朔哉は抱かれたあと、秀一郎から、暁宏には好きな女性がいて近々婚約するのだと言われる。屋敷を出ないかと誘われるが、朔哉はどう答えるか迷う。翌日、彼とともに、西川家の墓に行く。やっと儀式がうまくいったと報告しようとしたとき、自分は心を暁宏に捧げられない、ただ伝統に縛られていただけて恋ではなかったのだと悟る。自分は執事失格だという朔哉を秀一郎が抱きしめる。 『BOYSFAN BLコミック原作小説コンテスト』テーマ③お題フリー応募作品です。
読了目安時間:21分
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