―退屈が僕たちを、面白くない大人にさせようとしてる気がした だから、大人になる前に少しだけ、子供だった事を忘れない為の冒険がしたかったんだ― 東国の片田舎、朱槻(あけづき)市。清条ヶ丘(せいじょうがおか)の夏祭りの日。 茹だるような夏の日差しの中、山際で祭りの設営が始まっていた。 幼馴染の三人。マナブ、サトル、シオリは怠惰な日常を過ごしながらも、変わり映えの無いこの友情が心地よくもあった。 例年通り、代わり映えしない祭りの賑わいの中で、三人は子どもの頃にかえって「冒険ごっこ」をしようと提案する。 賑わいを抜けて神社の裏手を抜け、草をかき分けながら獣道を下る三人の前に、見覚えのない泉が広がる。 その美しさに足を止めた一行は、ほんの好奇心に駆られ、その泉へと入ってゆく。 泉の中心には古ぼけた祠と、そこに古めかしい石棺を見つける。 周りの制止を振り切り、サトルが石棺の蓋に手をかけたその時、辺りは眩い光に包まれた。 頭の中で鐘の音が鳴り響き、気がつくと3人は夏祭り当日の朝に戻っていた。 そうして、あの夜を巡る繰り返しが始まった。 全ての始まりとなる第一章『フラクタル』 世界を巻き込み、時間も時代も超えて交錯する少年少女の冒険譚の序章。