*「BOYSFAN」BLコミック原作小説コンテスト 「お題フリー」投稿作品です。 夏休み、亡くなった大叔父である誠さんの家の片付けを請け負うこととなった健斗は、その家で地縛霊だと名乗る若い男と出会う。奥さんも子どももいないはずの誠さんのことにやけに詳しいその男は、自分も手伝うと言って、その日から健斗と一緒の布団で寝起きするようになる。 地縛霊ではないだろうと思いつつも、スマホすら持っておらず、家から一歩も出ようとしないその男に「ナナ」という呼び名をつけた健斗は、口喧嘩をしながらも徐々にナナを信頼していくようになる。 一方、片付けを手伝いにきてくれた本家のお嫁さんである香苗さんは、あまりにも陰気で水墨画に描かれていそうな人であったが、実はアメリカ生まれアメリカ育ちで、英語のほうが得意だということが分かる。そんな彼女の提案で、アメリカでは遺品整理の一環としてメジャーである「エステートセール」を行うことに決まり、その宣伝要員としてちょっと前に健斗が別れたばかりの可南ちゃんも加わり、誠さんがコレクションしていた、多くの古いものたちを新しい場所で大事にしてもらうために4人で協力して動き始める。 そんな毎日の中で、バイだと言うナナになにかと振り回される健斗は、ナナの「心身ともに愛してもらえたら成仏できるのに」という言葉の重みを日が経つにつれて徐々に感じるようになり、地縛霊だと嘘をついていたナナも健斗の特別になりたいと本気で思うようになるにつれ自分は分不相応なのではと考えるようになり、お互いがお互いの未来のために悩むようになっていく。 最後、健斗の真っ直ぐな思いに覚悟を決めたナナは、真実をつげないまま誠さんの家を去り、本家で行われた誠さんの遺産相続の場に臨んだ。初めて知る事実に驚きながらもナナは誠さんの思いを受け取り、香苗さんが離婚するきっかけを作ることに成功する。 そして、すべてが終わって健斗のもとへと帰ったナナは、今度こそ恋人となり、その15年後。二人は3人の子どもとともに、取り壊される予定の誠さんの家を訪れたのだ。 誠さんの恋人だった男性、香苗さんに精神的DVを働く義理の家族、本家の財産を狙う親戚たち。 自分たちのことだけでなく、そんなさまざまな人や問題とも向き合いながら、遺された「もの」たちのために仲間とともに奮闘し、それぞれの未来を見つけるひと夏の物語です。
読了目安時間:12時間8分
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