『彼女』は――恋心を雷に例えた。 幼馴染の八重垣(やえがき)むつみとの距離感を図りかねていた、深川八雲(ふかがわ やくも)。 顔を合わせれば憎まれ口を叩き合う友達以上、恋人未満の関係。 しかし年を重ねるごとに綺麗になっていくむつみに対し、いつまでも冴えない自分に自信を失い、勇気を出せずにいた。 ある日のこと、神社でのお参りをした帰り。 相変わらず憎まれ口を叩き合い、「こっちを見ないで」とむつみが静止したにもかかわらず、振り向いてしまう八雲。 まるで――イザナミの忠告に耳を貸さなかったイザナギのように。 目も眩むような落雷の後、むつみの体には八色雷神(やくさのいかづちのかみ)と呼ばれる存在が憑りついてしまっていた。 八色雷神とは――黄泉の国でイザナミの体に纏わりついていた、蛇の姿をした雷神である。 大雷、火雷、黒雷、析雷、若雷、土雷、鳴雷、伏雷。 突如として八重人格となってしまったむつみを救うため、八色雷神と対峙する八雲。 時に脅され、 時に痛めつけられ、 時に誘惑され、 むつみの体から出ていくよう、雷神たちを説得していく。 交流を通し、自分自身に足りないものを一つ、二つと補いながら。 恋心と成長と雷鳴で八重奏(オクテット)を奏でる――ネゴシエーションお祓いラブコメディ。
読了目安時間:5時間20分
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