たまに夢を見ている気がするのだけれど、起きると何の夢だったのか思い出せない。 寝て、起きて、仕事して、寝て、起きて、仕事して、 同じことが繰り返される毎日に何の意味があるのか、とも思うが大して意味なんて求めていない。 週末に一人で見る映画も、好きなアーティスとのアルバムも、同じようなありふれた悲しみの果てを垂れ流しているけれど、そういうものも必要なんだ。 どんな言い訳をしてみても、私がコミュニケーション下手なのは変わらないし、他人と向き合いたくないのも変わらない。 都会の喧騒に存在する、全ての人の気持ちが分かれば、私も器用に生きることが出来るのだろうか。いや、いい。そんなもの、分かったところで辛いだけだ。 私も含めて、皆、残酷だから。 付き合った理由は、私が彼女に惹かれたのがきっかけだ。だが、私に好いてもらう理由があったかどうかは曖昧だ。大した人間じゃない。それなりにイタイ過去もあるが、ネタになるほど面白くもない。かといって、誰かを優しく包み込めるような人間でもない。 どこにでもいる、ありふれた、何の変哲もない、自分。 人一倍臆病な私が、この歳になってもう一度恋をするには、相手との距離が必要だ。誰かの心に触れるために最も大切なのは、互いの適切な距離を見誤らないことだと思う。 《本文より抜粋》
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