これは白竜と契約して味覚と体を失くした少女が、絶望の果てに生きることを選び、出会った仲間のために戦う物語。 錬金術を題材にした某マンガが好きな、19歳無職の満月琉凪《みつき るな》は、ひょんなことから名前すら聞いたことのない大陸に足を踏み入れる。 剣と魔法と錬金術が存在する、二つの国に分断された大陸に。 やがて、一体の白い巨竜と契約する。 竜といえば火を吐く――はずが、白竜は火を吐けない。それどころか魔法も使えない。かつ魔法への耐性もない。 なんとも貧弱な竜と契約してしまった。 加えて、竜との契約により、体はおろか人生そのものを失い、琉凪の運命は大きく歪められてしまった。 だが、失ってばかりではない。琉凪はいつの間にか錬金術を操る、憧れていた本当の錬金術師となっていた。 竜との流浪の最中、琉凪は様々な仲間と出会う。 敵国に妹を連れ去られた、とある小さな村の戦士たる偉丈夫。 三年前の戦争で家族を失い、紅い悪魔と契約した傭兵の少女。 歪められた運命と仲間の出会いは、やがて琉凪を災禍へと誘う。 剣はともかく、魔法と錬金術など似たようなもの。 魔法があれば錬金術はいらない。錬金術があれば魔法はいらない。 ならば、なぜこの大陸には魔法と錬金術が共存しているのか。 なぜ白竜はあまりにも貧弱なのか。 なぜ琉凪はこの大陸に迷い込んだのか。 運命に抗う少女と、多くの謎を秘めた白竜が紡ぐ、ハイファンタジー冒険譚。