「ついて来てください! 是非ともあなたを借りたいんです! もちろんタダでとは言わない。そうね……わたしを担保にどうかしら」 同級生のショートカットの女子は、丁寧すぎる礼をしつつそんなこと言うから、驚いたなんてレベルじゃない。ちなみにウィンク付き。 自分はあいにくそういった趣味は持ち合わせていないので、なんて通用しそうにないしなぁ。自分はこの図書部で、慎ましい高校生活を送りたいだけなのに。 結局放送部に連行もとい招待された自分――羽倉崎祐。毎年選ばれるトップスターを主人公に作品製作するここ放送部で、例の女子は次期トップスター候補の一人だった。当然校内ではアイドル同然。 そんな華麗な環境に放り込まれれば、風当たりは強くなるわ、周囲からは見えない内部事情にに巻き込まれるわ。ああ、これで心休まる時間は消えた。家にいたって疲れるのだから。華やかなんてまっぴらだ。 校内一華麗な世界、放送部にまるで正反対の図書部員、祐は困り果てる。それには祐特有の事情も重なって? 小さくて巨大な階級社会、山手大学付属永田高校は今日も絢爛に、そして不気味に回る。とにかく、程度の差はあれ、青春真っ盛りの高校生は難しいお年頃なのです。 追記……ジャンルは純文学/文芸ですが、ライトノベル~ライト文芸辺りの作品だと思います。